調律師になって良かったと思うこと


皆様ご無沙汰しております。
11月に入っても半袖で十分という異常な気温の中、元気でマイペースにお仕事しています。

本日は50年以上調律していないピアノ。若い頃に色々と苦労してきた今となっては珍しいメーカーのピアノでした。先生のご紹介でしたが、この状態を見た時、どうしようかと思いました。これまで、どんな状態でもやれるだけやってみるスタンスでやってきましたが、しかし、今後、練習で使用した場合の耐久性を考えると考えものです。今後のことや費用などを含めたお客様との話し合いの上で、調律、修理を実施することに決めました。

「もう寿命です、買い換えましょう」という楽器店(調律師)がほとんどでしょう。そっちの方がはっきり言って楽ですし儲けにはなるのでしょう。しかし、厄介な技術者魂というものはそうはいきません。直せるものは直そうとする悲しい性が存在します。30年以上調律師やってきてお客様宅では過去一の音の狂い方で、半音どころか、一音狂っていました。

弦が切れないようにビビりながらまず半音上げるのに3回調律。それから日を改めて半音上げ調律をするのに2回。合計で5回の調律をする必要がありました。それでなんとか復活。湿気にやられて動かない鍵盤も20本くらいはありましたが、全部修理して綺麗な音にも復活しました。これってピアノ修復師だよな〜、、と。

全て終わった後に「いいお仕事ですね、、!」と言われて「ありがとうございます。そうですね、ピアノの響き(音)がたまらなく好きなんですよね、、」などとお話しをしていると、お客様が号泣し始めました!!

「えっ!なんかまずいこと言ったかな?」と思っていると幼少の頃に亡くなられたお母様の形見のピアノだということでした。絶対に修理を断られるだろうと、ダメ元で依頼をされたとのことでした。色々と思い出されたとのことで、こちらとしても「やばい!!涙腺が〜〜!!」と必死で涙を堪えて、なんとか無事に任務を終えることが出来ました。

何度も「本当に素晴らしい、いいお仕事ですね!!」と言われて、嫌な事や、辛いことはいっぱいあったけど調律師をやってきて良かったと思える瞬間でした。あまりに嬉しかったので、無断で記事にさせていただきました。今は潰れてしまっているメーカーですが、若さゆえのほろ苦いあの懐かしい修行時代を思い出して、ああ、こんな素晴らしい音のメーカー(ブランド)だったんだとこのピアノの本来持っているポテンシャルと美しい響きにも、お客様のお話にも感動してしまいました!!こちらこそありがとうございました!!


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