一旦原点回帰


調律師長年やっていると分身である道具(チューニングハンマー)にもこだわってきます。

自分の理想の調律を追求すると、思い通りの操作性を求めて、ハンマーの操作に対しての音やタッチ感の反応が早いものが必要になってきます。

細かな音も聴きやすくてシビアな操作がやりやすいものになったり、材質にもこだわりが出てきます。可能な限り軽くて剛性の高いものになってきます。操作性だけではなくてサウンドも良質でなければなりません。

そのために自作の道具を作ったり、流行りの道具を使ったり、定番人気の道具を漁りまくる羽目になるのです。日本にない道具はアメリカやドイツなど海外から直輸入もしたりしだして、それだけ値段も高くなります。

それはそれは、ものすごくためになるデータが揃ってきて、一喜一憂し、道具探しの旅は20年くらいかけてきましたが、もう数年前に終了しています。究極のものに出会ったからです。


残念ながら、いい道具を使えば調律が上手くなるわけではありません。ピアノによっての相性がありますし、お客様にも好みがあり、下手に個性的なものを使うと仕事を失うこともあります。チャレンジするかしないか、恐ければ同じものをずっと使い続ける方が無難です。


ところが、調律学校時代のビギナー用というか、普通の、ノーマルタイプを持っていないことに気がつきました。卒業後10年近く、そればかり使っていて、あるとき調律中に先端がポキッと折れてしまったのです。今必要なのは、その響きだなと、ここ最近はずっと思っていました。

高い材質(響きの豊かな)を使用した道具を使うと、ピアノの響きも豊かになり、基本設計が良い高級ピアノなどはより良質な響きを引き出すことができる反面、基本設計が悪く材質も悪い(安物の)ピアノは、欠点も浮き彫りになってしまうことがよくあります。ただただ安っぽい音になってしますのです。

そんな時、普通の道具を使って実施すると、シビアすぎない操作性からくるサウンドが、温かみのある音につながって欠点が表に出てこないということもあるのではないか、ということで、一旦原点に戻ってこれからしばらくやってみようと思います。

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