調律師の個性

 20年近く担当のグランドのハンマーのファイリングをしました。ものすごい時間を演奏するピアノですので、すでに何回か削っています。しかし、新品時から何回か削っていくと、やがてこれ以上削れない状態がやってきます。このピアノはまだまだ大丈夫です。

最近思うのですが、中古ピアノで商品として売る時などは特にですが、形を優先して寿命のことは二の次になりがちです。でも、多少形が不揃いでも寿命を優先することも大切だと思いますし、それが最終的な響きとしての調律師の個性にもなると思います。(ガタガタの削り方だと問題ですが)何でもかんでもスタインウェイの様な先の尖った卵形にするのは好きではありません。そのメーカーにあった音色をつくりたい派です。

新品のようにシューシャイン方式できれいに削れないからと言うのでは問題だと思いますが、分かった上でのこのような道具(ファイラー)を使ってファイリングしていった音の方が自分は好みです。整音込みで調律師によって個性を出すひとつの調整分野だと思います。


 ちなみにめちゃくちゃ弾くと(これはピアニストのピアノで毎日7時間以上弾いてると思います)最終的にはこうなってしまってハンマー交換になります。(これは最初の写真のとは別のピアノです)一般的にはここまでには絶対になりませんから安心して下さい。こうなる前の対策と処置も実施しています。


 ちなみに低音域はこのようにフェルトの厚みがあるのでまだ余裕がありますが、高音側はフェルトが薄いので注意が必要です。
 

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