真空パック


サイトからご連絡があり約10年振りにお伺いしました。前回までは自分がすべて定期的にお伺いしています。ピアノを使っていなかった事もあってその最後の状態がまるで真空パックされていた様な状態で、とても懐かしい音をしていました。

この10年本当にいろいろありました。まず、自分の置かれている環境が180°変わった時です。お得意先が個人経営から大手企業に変わりました。お客様の層も大きく変わりました。必然的に求められるものも変わりましたので自分の欠点をすべて克服しないと行けない状態にもなりました。

自分の欠点とはすべての作業のスピードです。それまでの20年間は時間をかけるという美学(方針)を間違った方向で実施していたので、内容の割に時間がかかり過ぎていました。そのために質を下げずに量をこなすことが新しく求められたのです。 ゆっくり丁寧な作業は最終的な響きに緊張感もおもしろみもない欠点を露呈することがある。

今とは調律法も全く違いますし、使っている道具も方法もまるで違う。以前の音と今の自分の調律の何が違うか一言で言うと「演奏で音に色気を表現出来る」ということに尽きると思います。

10年くらい前の音は、悪くはないんだけど何かが決定的に足りないような音でした。そう、置かれている自分の立場と全く同じ音だったわけです。その後10年近くかけて調律で音に色(色気)をつけようとしていろいろ方法論を試しました。しかし、調律の段階であまり色を付けてしまいますと、技術のある演奏者が表現する時に問題が生じることを学びました。

今はさまざまなレベルの演奏者が表現したい音を表現出来る状態に持って行くことに重点を置いて、お客様やピアノの状態を見て何をするべきかを最優先にし、自分のエゴを捨てて作業をする様に心がけています。まだまだ調律師歴30年にも満たない未熟者ですが、これまでのお客様、すべてのもの、出逢った人に感謝するばかりです。今回ご依頼いただき本当に嬉しかったです。ありがとうございました!!


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