簡単なカラクリ


今年で3回目の訪問になりますが、前回よりは狂っていました。ピアノはなぜ狂うのかをお客様が完全にご理解をされていますので、非常に話が早いです。

ピアノが狂う理由はおおまかに4つあります。

1.ピアノに問題がある。

新品ピアノの場合。 これはまだ、弦や部品が馴染んでいないので安定していません。一般的に安定するのに2〜3年かかります。

○調律をしばらく(何年も)していない場合も、一度の調律では安定しません。

○駒割れ、響板割れ、ルーズピンなどオーバーホールや修理が必要な場合はどうしようもありません。(滅多にはないですのでご安心下さい)

2.環境に問題がある。置き場所の温度差が大きい、湿気が多い、過乾燥など)

○これも大きな原因です。一定の温度、湿度を1年中ずっと保っていると、抜群に安定します。湿気の場合は数日かかって影響がありますが、温度の場合は即座に大きな影響があります。なかなか出来ないことですが、24時間の一定の温度、湿度の管理が出来れば、調律の安定も抜群に良くなります。

温度は15〜20℃、湿度は55パーセント前後が理想ですし、音も気持ちよく鳴ります。しかしながら現実的に考えて一般家庭にはかなり難しいことだと思います。除湿機や、エアコンを上手く使わないといけません。勿論ですが、暖房機具の風などをピアノに当てては行けません。

結構多いのですが、エアコン、除湿機などを夜に切ってしまう場合、その間に温度差、湿度差が大きく生じると、狂ってしまいます。

3.弾き方に問題がある。

タッチが強烈に強いと、当然ハンマーやクロス関係のダメージが大きくなり、弦などの屈折部分に刺激を与えてしまい狂いやすい傾向にあります。部品の摩耗も大きくなりますし、弦も切れやすいです。その為に、技術者はその屈折部分やピンの部分を調律のときにどうするかで、音色、タッチ感、調律の持ちをコントロールします。

4.調律に問題がある

いい音が長持ちする調律は何十年もかけて調律師が苦労するところです。勿論例外もありますが、たいていの新人の調律はすぐに狂ってしまいます(自分はそうでした)理由は、あたりまえなことですが、自分の調律の半年後や一年後のピアノが温度や湿度や調律法でどう変化するかを体験したことがないからです。

始めはピアノの先生や、グランドピアノを触らせてもらえません(今は違うかもしれませんが)触らせてもらえても当然すぐにクレームが来ます。気の遠くなる様な時間をかけて、狂わない、いい響きのコツを自分自身で見つけていきます。

しかし、何よりも大きな原因は1.と2.が圧倒的だと言えると思います。それがひどい環境だといつまで経っても安定することはないでしょう。

どんなに天才的な調律師でも一回の調律で完璧に安定する魔法はありません。何回かかけて(人それぞれの方法論で)安定させていくのです。

調律を何回か定期的にしていくうちに、少々の悪い環境であっても強く安定したたくましいピアノに育って(育てて)いくのだと思います。

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