納得のいく整音は、限られた時間内ではなかなか実施することが出来ません。「ピアノの調律」と一言でいっても「調律」だけでなく「整調」「整音」がすべて整ってはじめてピアノは素晴らしい楽器になるわけですが・・・
実際問題、「調律」だけでも完璧な状態にする為には定期的な調律は欠かせません。
1年、あるいは半年、新しいピアノやしばらく調律していないピアノでは3ヶ月くらいでメンテナンスをしていなければ、数年に一回だけの「調律」だけでは良い(まともな)状態を保つことにはとてもなりません。
今回は、この10年近く半年定期でメンテナンスさせていただいているお客様に、本格的な整音を実施しました。ピアノは弾く程にハンマーが固くなるのが一般的なので、もちろん何年に一回かは実施していますが、今回は明確な目的があって実施しました。結果は激変しました。
こちらは15年以上診ているピアノで相性も完璧ですが、慎重に進めました。調律をおろそかにして整音だけに溺れるのは非常に危険だからです。整音が難しいことの一つには、そのピアノに最高に良い整音の仕事ができたピアノの音をビフォーアフターで聴いたり、弾き込んだりする機会が調律師にもほとんどないことです。
ピアノは工場出荷の状態はとても最高とは言えない(最悪のもあります)ですから、メンテナンス次第でピアノの個性、性格、寿命までもが全く変わります。
新人は実践で整音をさせてもらえません。大切なお客様のピアノで失敗したら元に戻すのが難しい。大問題に発展します。でも、失敗をたくさんしないと技術力は向上しないわけですから、難しい問題なのです。
仮に整音をしなくても「このピアノはまあこんなものか...」ですむ場合でも、音に敏感な方ならなら調律がイマイチならクレームや「ハイ、サヨナラ...」に発展しやすいという危険性も常につきまといます。
大切な項目なのに、なんと国家検定に整音がないのは納得いかない気もします。ここでも整音は後回しです。いかに感覚の世界かということがわかります。聖域とも言われるくらいですし、企業秘密も多く、試験にもなりにくい分野でもあります。
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