新人時代と道具


久し振りの長文になります・・
20年くらい前の新人時代のことです。

バブル全盛、そして崩壊した後もしばらくは、毎月のようにこのピアノメーカーの新品(納入)調律をしていました。新品は、どのメーカーもチューニングピンも固く、力がいります。特にピンが固く感じ、全体の張力低下も大きいピアノメーカーでしたから、Y社製などよりもより大きな力でよりピンを回さなければ(動かさなければ)なりませんでした。

ということは、ピッチを高めにしておかなければ、ピアノもなかなか安定しないということです。このことは当然売っている営業さんは知る由もありませんでした。そんなこと話題にすらなりませんし、興味も発想もなかったかもしれません。調律していた技術者だけが知っていることでもあり、ちょっとした不満でもありました。明らかに勉強した調律の学校(Y社がほとんどだった学校)では体験したことのないピン味(調律時の心地よさ加減)でした。


自分も新人でしたし、もう一社、技術者同士では何かと話題になる特徴のあるピアノメーカーを扱っていたので、まあ、Y社、K社以外のメーカーはこんなものなのかな?と思ってましたし、コツを教えてくれる先輩もいませんでしたので、自分で解決しなければなりません。でも、明らかにヘトヘトになって、何回もやり直さないといけなかったので、調律のやりやすいY社のピアノを扱う人達がうらやましくてなりませんでした。

今ではこのメーカーの新品に出会うこともほとんどなくなり、特徴、傾向、クセはつかんでいますが、当時はこのピアノばかり調律していたら、高音が異常に高くなってしまうという悪いクセがついてしまいました。(なぜかと言うと他社のピアノよりも高音域がすぐ下がってしまうから)だだし、これは、あくまでも自分の調律のやり方(操作)での話であって、他の方は、当然全く違うという人もいると思います。

スピードを重視したために、やや乱雑で動きの大きい操作方法をしていました。(これはピアノの安定のためにも、音色的にもあまりよくないことは当時は理解していませんでした。)



さて、本日はここから・・・

写真の道具は強靭な道具なので、新品ピアノ、長年調律してないピアノなど、より多くピンを回す場合には非常に頼りになります。その代わりに反動で別の問題も起きますが、、、



こちらは繊細な操作、いろんな調律法にバランスよく対応出来、今はとても使いやすいと感じます。新人当時はこのタイプしか使っていませんでした。新しく固いピンのピアノにはちょっときついかな・・?ガチガチのピンにはまた違う重量のあるタイプを使いわけます。

少し前までは、道具による音やタッチ感の違いをもっと昔から知っていればな〜と思っており、強靭なタイプの道具を使っていれば良かったのに、、とも思っていましたが、これはあくまでも、スピードアップ、つまり自分が楽をしたいがための発想であり、結局はどんな道具を使っても、肝心なのは道具を使う際の繊細な「操作技術」であって、「道具」そのものは関係ないということが今日、完全に理解することが出来ました。

道具選びはものすごく重要なのですが、結局、道具は関係ないと言う結論になってしまいます。道具に使われてはいけないということなのでしょう。これは何の世界でも共通することなんだと思います。

「道具を使って調律する」結果がすべての世界なので、道具をいいわけの道具にしてもいけないということなのかな〜とも思います。


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