電子ピアノを語る



電子ピアノを語るのは初めてだと思います。電子ピアノには調律が必要ありません。それから生のピアノが置けない環境だったりする場合は(近所迷惑に配慮、マンションで設置が禁止されているなど)最高に便利な、夢の様な楽器です。

電子ピアノは生のピアノをサンプリング(録音)したものを鍵盤をおさえた時、その部分の録音したピアノの音を再生させる楽器であり、弦が張っているわけでもないですから、狂うことはありません。メンテナンス費用がかからないので維持費がかからない最高のメリットがあるわけです。つまり、日々、生のピアノに向かっている(格闘している)調律師にとって、仕事上で日々関わることもほとんどなく、全く違う世界のものという感覚です。

この写真は自宅の電子ピアノです。自分もしっかりと電子ピアノも使っているわけです。何のために使っているかと申しますと、、、

1.夜に練習するため
2.恥ずかしい練習の段階でご近所さんや他人に聞かれたくないため
3.MIDIレコーディングのため(アイデア勝負のときや、調律している時間はない時、録音後、音源を差し替えるとき)

この3つのメリットがとても大きく、すべて生のピアノでは出来ないことです。ボリュームがついているため、鍵盤をおさえたときに鳴るカタカタという機械音は消えませんが、ピアノの音を自由に小さくしたり、ヘッドフォンで弾くことも出来ます。重量も軽く、機種によっては自分で簡単に移動も出来たりします。生のピアノだといったん設置したら移動はちょっと大変です。

デメリットはやはり、スピーカー(紙)から音を出している以上、生ピアノの最適、最高な材質の響鳴板で弦振動を増幅させたアコースティックな生の音と比べると、どうしても違ってきます。生で音を聞きながら弾いたときのタッチの違和感も比べると違ってきます。生のピアノを基準にした場合、どうしてもチープな(安っぽい)印象になってしまいます。

確かに電子ピアノのカタログなどを見ると、グランドピアノに迫るタッチ感だとか、限りなくグランドピアノのような響きだとか書いてあり、ほとんど同じなんだろうと期待でワクワクします(笑)でもこれは決して嘘ではないことであり、迫るだとか限りなくと言った表現をどこまで納得して「そうだそうだ!」とうなずけるかは、人、状況、環境、比較対象、考え方などによって全く異なります。

毎日のように生のピアノの内部を触り、道具、調律法によってタッチ感や表現力まで変わるだとか、整調、整音といった0.02ミリ以下の単位でピアニストに「タッチ(音色)を○○に変えてくれ」などと言われたりする様な環境で仕事をしていれば、全く同じ「ピアノ」というカテゴリーの楽器だとは言えないという考えになってしまいます。(ピアノが弾ける弾けないはまた別問題)

調律師にとっては「別にピアニストや音楽の仕事をするわけではないので・・・」といった最強の「いいわけ」が使えない環境で仕事をしている。つまり、思いっきりピアニストやピアノの先生といったプロの人達のピアノを触っているということなので、「別にピアニスト・・や別にプロになるわけでは・・」と言った考えをしていたら仕事が無くなってしまうのです。

でも、電子は電子の究極の世界も存在する。決して否定しているわけでも馬鹿にしているわけでもありません。ステージで最新のコンピューター、音源、自分たちで表現している音楽に最適なサウンドといったものを追求しているプロのミュージシャンもいるでしょうし、生のピアノよりも電子のピアノサウンドの方がマッチしたジャンルや音楽もあります。それはまた別世界の仕事であり、調律師は調律師で生のピアノに究極的に向かっているスタッフだという、ただそれだけなのかもしれません・・・


コメント

  1. あおみどり2010年6月8日 22:48

    とってもよく心に染みいるお話です!

    私も普段はデジピしか弾いていないので、かなりな愛着もわいておりますが、むしろ、おっしゃる通り、アコピとは別物楽器と捉えております。そしてどっちも好きです。

    私が使っている理由は、夜にヘッドフォンで弾くことは共通ですが、録音&メトロノーム機能が大きいです。自分でゆっくり目に弾いた左手部分を、あとでメトロノーム機能で早めに再生しながら右手を練習、とかしております。ほとんどそれのために使っている状態です。

    あとは連弾も、自分のパートではない部分を弾いておいて、自分のパートを練習したり。

    音色変えて楽しむのも、最初はよくやっていたけれど、気がつくとピアノの音色だけで弾いてますね。やっぱりピアノの音は素敵です。(サンプリングしているだけに)

    そしてデメリットも承知です。生の、グランドの、ステージの、最高の調律の元で奏でられた音は、なによりスケールが大きくて素敵です。特に古典~ロマン派と、近代フランスの音楽などは、アコピじゃないと表現できない事柄が多すぎて困ります。

    グランドでしているあんな苦労やこんな苦労・・・。すごく気を使って弾いているのに、それが音に出てこないもどかしさはどうしようもないですね。(ポップスではあんまり気になりませんが)

    特にペダルに関してはすっごく気を使っているのですが・・・デジピのペダルはまだまだ進化が必要と思います。(まだまだ再現度低いですね)

    デジピ界も、グランドに近づくことが至上命題になっているような謳い文句多いですが、それは歴史の流れ上仕方ないといえますね。

    フィルムカメラの現像写真とデジカメのプリントの違いみたいなもので・・・デジカメもより現像フィルムに近づく努力してるみたいですし!(こちらは相当進化してますね)

    ピアノも難易度が上がれば上がるほど、デジピだとものすごく難易度が上がるので、そういう意味ではよい練習になっていることもあったりして(^。^;グランドで弾いたら「うわ、弾きやすい~!」と感動したこともあります(笑)

    現実問題としては、デジピの進化は、大人の社会人に優しいし、ピアノ教室の繁栄にも役立つので、ぜひこのまま進化していった欲しいと思いつつ、グランドピアノが弾ける環境も絶対なくさないでほしいと切に願っております!

    調律師さんに日々感謝の日々です。

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  2. こんばんは

    ピアノトオト さんの電子ピアノの考え、よく解りました。
    私は
    アレンジャーKORG Pa50で鍵盤をかじり
    シンセサイザーKORG Radiasで音作りの楽しさをかじり
    電子ピアノ Roland FP-7でピアノタッチの素晴らしさをかじり
    アップライト YAMAHA UX10BLで生の音で弾きかじり・・・
    という変遷を短期間経験しました。
    驚くほどの浪費です。

    趣味の世界なので、うまい下手は次です。

    このような初心者ですが、電子ピアノは今では使わなくなりました。もったいないなーー
    鍵盤のタッチがやはり違うんです。
    電子ピアノは底が浅いような感じがします。

    もっとも現在の新製品電子ピアノはさらに性能が上がってますので、その差がなくなっているようです。

    ピアノは好きなんだけど・・・
    電子ピアノしか置けない家庭がいっぱいあると思います。
    そういう意味では、ピアノ文化を普及する大切な役目を果たしていると思います。

    ぼくも時々弾いてみようと感じました。

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  3. あおみどりさん

    生のピアノ(特にグランドは)と電子ピアノでは細かいニュアンス、表現力には大きな差がありますね。ペダル関係はダンパーペダルを使ったときの生ピアノの無限の響きがどうしても再現出来てないです。ウナコルダ(ソフト)もちょっとおおざっぱ過ぎますね。これは、実際問題、グランドピアノの構造を知ってしまえば再現不可能に近いかもです。音色が変わり過ぎてウナコルダ使わない人には関係ないですが、、、。電子でペダル使わずに脱力や弾き方で左のペダル踏んだ様な音をつくるのも至難の業だと思います(笑)

    確かに電子ピアノで速い曲をずっと練習したあとグランドでは間違いなく弾きやすいですが、繊細な表現力の必要な曲には逆に戸惑います。(荒っぽい表現力になる)

    電子ピアノもメーカーがもっと本気出せばもっといいものがつくれると思いますが、果たしてどれだけ売れるのか?という問題が出ますね。生ピアノ並みに値段が高くなると、安さというメリットがなくなってしまうわけですし、、、がんばっても楽器としてはジャンルが違うわけですから、究極の電子ピアノという位置づけになります。

    ピアノがどうしても置けない環境の人達にとっては、とてもいい楽器だと思います。ただ、電子ピアノの割合が増えてくると調律師の仕事が減ってくると言う悲しい現実があります(泣)

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  4. yamakun3さん

    ようこそ!いらっしゃいせ。。

    中々こだわりの楽器をお持ちのようですね(残念ながら触ったことがございません、、)UX10BLはしょっちゅう触っています(笑)高音がきらきらと独特の輝きがあって、ピアノが古くなってもまったく古く感じないような音ですね。調律もやり易いです!

    電子ピアノのタッチは比較したらどうしても違いますね。生ピアノにサイレントを取りつけられているようですが、サイレンと状態の時、電子ピアノよりははるかに生ピアノに近いとはいえ、それでも、生の音の方が全然気持ちがいいと思います。『木』と『弦』が本当に鳴ってる音はたまらないです(笑)

    調律師ですので、電子ピアノしか置けないご家庭には仕事でお伺いすることはまずないのですが(笑)生ピアノにはない電子ピアノならではの機能や目的を上手く利用することが出来たらいいですね。

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  5. あおみどり2010年6月9日 23:17

    こんばんは(^^)デジピとアコピのお話は盛り上がりますね!

    >繊細な表現力の必要な曲には逆に戸惑い

    わかります・・・私も、グランドで近代フランスものを弾いている時「タッチ・音量調節・ペダル」のコンボでの複雑な動作があまりに大変なのを長い間経験してきたためか、デジピだとそこらへんが適当になってしまうんですね。

    バッハやヘンデルなど弾いている時や、今時のポップスやアニメ・ゲーム音楽など弾いている時にはあまりない苦労というか。(ほんとは苦労するのですけど)

    グランドが久しぶりになると荒っぽくなるのも分かります。

    要は楽器に寄って「弾き分け」が出来れば問題ないわけなのですが、難しいですよね!ただでさえ生ピアノでも弾き分けないといけないのに、デジピとアップとグランドとシンセとケンハモと(笑)そのうえで、作曲家別でも、音楽ジャンル別でも変わってきますし・・・(泣)

    鍵盤楽器奏者の永遠の課題ですね。

    そしてそんなことは「当り前」とされてしまう、悲しい現実。ピアニストはMy楽器を持ち運べない運命にありますしね。(;;)

    デジピはこれからもずっと進化していくと思いますが、個人的にはアップの進化を希望してます!アップのアコピは庶民にとっての強い味方ですね。なんか話にとりとめなくてスイマセン。

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  6. あおみどりさん

    >鍵盤楽器奏者の永遠の課題ですね。

    鍵盤楽器はとても大変だと思います。音階を12で鍵盤上に割ってならべていること自体にそもそも無理があるのでしょう(笑)

    全く同じメーカーの同じ機種のピアノを並べて置いていても弾いたら全く違うタッチと違う音なんですから・・・いかにもアコースティック楽器だということでしょう。仮に電子ピアノで比較してもは全くといっていいほど差がないと思います。

    >ピアニストはMy楽器を持ち運べない運命

    ぜひ、MY椅子だけでも、、、ですね・・・

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